若いときは非常に多くの本を読みましたが、この一冊というのが存在します。

それは大井 篤(おおい あつし)という人が書いた、「海上護衛戦」(かいじょう ごえいせん)という本です。まずこの本は大日本帝国海軍が太平洋戦争をどのように始め、またそのさなかに何を考え何をしていたのかを、つまびらかに記した歴史書としての絶対的な価値があります。

このような本を、戦後間もない1953年に記憶の新しいうちにすでに出したという点も含めて、驚愕の一冊です。

それに加え著者の生きざまが私の魂を打ちました。太平洋戦争という狂乱の中、どこまでも客観性を保とうとする姿勢、置かれた環境の中で何とかできるだけのことをしようとする行動、空気を読まず上官にも逆らう勇気、戦時下でこれだけ気炎を発しながらも予備役や前線送りにされず陰湿な日本人社会を現役軍人として泳ぎ切った対人能力と空気の読み方、そして恐らく海軍がその自由を許した理由であろう著者の圧倒的な才覚と努力。

この本を大学生の時に読んだ私は、言葉にできない決定的な影響を受けました。そして大きな流れでいえば、今私がこのWebサイトでの活動を行っているのは、この本を読んだからです。

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